ビジネスコンサルティングの現場から

各種ビジネス・コンサルティングに携わる担当者が、日頃、「考えている事」や「気が付いた事」を不定期に発信します。

「東京で売れる地方の土産物をつくりたい」という発想もあるらしい

東京と地方の土産物屋


お盆休みは、地方に帰省された方も多かったのではないでしょうか。

まだ本調子でない方も多いと思いますので、今日は、「土産物」に関する、ちょっとした小話を。

土産物を開発したいという経営者のお話

ずいぶん前になりますが、地方の会社の経営者の方とお話させて頂いた際、

「新しい土産物を開発したい」

という話が出ました。

もちろん、こうした話は珍しいものではありません。土産物は、「熱い」ビジネスです。

議論を進めようと思い、

「土産物の開発は、簡単そうに見えて、意外と難しいです。」

「消費者のニーズを考え、相当がんばって開発しないと、消費者には選んで貰えません。」

といった話をしました。

そうすると、経営者の方は、

「(今回の土産物開発に関する)キーワードは既に決まっている」

と仰るのです。

そのキーワード次第で、その土産物開発の成否は決まるな、と思って、恐る恐る、聞いてみました。

「どんなキーワードで、今回の土産物の開発をされる予定なのですか?」

その経営者の方の答えは、以下のようなものでした。

「とにかく、東京の多くの売り場で、人気が爆発するような土産物を開発したい

その時の私の頭の中は、クエスチョンマークがいくつも並んだ気分でした。

地方の土産物ですよ。

私は、「その地方の駅や土産物売り場で消費者に選んで貰う為には、どうすれば…」と考え始めていました。

しかし、その経営者の頭の中には、「東京の多くの売り場」があるようでした。

もちろん、その経営者の方には、質問させて頂きます。

「地方にある会社として、この地方の土産物を開発されるのですよね?」

経営者の方は、当たり前のように回答されます。

「もちろん、そうだ。地方の名物にしたい。旅行の本やテレビなんかでも、この地方の土産物として、バンバン取り上げて貰えるような土産物を開発したい。」

私は、確認します。

「であれば、この地方の売り場で、旅行者に選ばれる事を、まず考えた方がよろしいのでは…」

経営者の回答は、こうでした。

「もちろん、この地方の売り場でも売る。しかし、それだけでは不十分だ。開発する土産物は、東京でも売れなければ意味がない。」

これは、かなり注意して、この経営者の方の本意を理解しないと、大変な事になるな…と考え、その後、注意深く話を伺いました。

そして、その結果、これまでの経営者の発言は、以下のような認識によるものである事が判明したのです。

・自分が意識している(目標としている)地方の土産物の会社(主に、菓子)は、東京の百貨店などに売り場がある。だから、当社も、東京で売れる土産物を開発したい。

・東京で実際に売れているものであれば、消費者のニーズに対応出来ているはずである。そういう土産物は、旅行者にも選んで貰えるだろう。

以上、2点です。

さて、皆さまは、こうした意見(考え方)、どう思われますか?

正直なところ、私は同意出来ませんでした。もちろん、一部、土産物を開発する側が意識すべき大事な点が含まれている事は否定しませんが。

地方の土産物は東京で売れるべきなのか

しかし、「地方の土産物が、東京でよく売られている」という事は、事実らしいのです。

確かに、調査してみると、いわゆる物産展での販売はもちろんのこと、アンテナショップなどでの販売も増えています。また、通販(お取り寄せ)も一般的になってきていますし、先ほどの経営者が仰っていた通り、メーカー自身が店を東京に持っているケースも少なからずあるようでした。

こうしたケースを地方にいて見ていると、この経営者のような発言になってしまうのも、仕方がないことなのかもしれません。

ただ、その一方で、「東京では売っていない、定番の土産物」が世の中に存在する事も、私は知っています。

これらは、「どちらが正しいか?」という問題ではないのでしょう。

しかし、一旅行者として、「その地方に行った時、どういった土産物を買いたいと思うか?」と聞かれれば、私の答えは明確です。

さて、首都圏ご在住の皆さま。

(首都圏以外にお住まいの方は、東京をご自分のお住まいの地域に置き換えてお読み下さい)

皆さまは、旅行先でお土産を買う時に、そこでしか買えないものを頑張って探しますか?

それとも、東京で買えると解っていても、知名度の高いお土産を買って、持って帰りますか?

そもそも、旅行の土産といいながら、旅行先で買わず、東京や通販で買っちゃいますか?

様々な方に、意見を聞いてみたい気がします。

なお、この後、この案件がどうなったかについては伏せさせて頂きますが、「旅行者を迎える側が、旅行者の気持ちを理解する難しさ」や「好調な売上をしているように見える土産物業者の経営状態」など、様々なことを考えさせてくれた一件ではありました。