ビジネスコンサルティングの現場から

各種ビジネス・コンサルティングに携わる担当者が、日頃、「考えている事」や「気が付いた事」を不定期に発信します。

スマホ決済の競争に勝ち残った事業者も勝者とはなれないかもしれない

スマホ決済のスマホQR決済を使ったキャッシュレス支払を行う


キャッシュレス決済によるポイント還元キャンペーンが始まりました。

しかし、今回のポイント還元をあまり目新しくは感じない方も多いのではないでしょうか。

それは、「スマホ決済をすると○%還元」というキャンペーンが少し前から行われており、そのような概念が既に新しくはないからでしょう。

 

少し前、年配者から、このスマホ決済による還元キャンペーンについて質問を受けました。

「(スマホ決済をすると)なぜ安くなるのか、さっぱり解らないのだけど?」

その通りだと思います。

そこで、今回は、この仕組み(なぜ、各社が還元しているのか)を確認した上で、この新しいビジネスモデルの限界や、こうしたビジネスの暗部にまで深入りしてみたいと思います。

こうした会社と利害が関係している人、特に、こうしたビジネスを行っている会社の将来を楽観視している人にとっては興味深い内容になっていると思います。

なぜスマホ決済による還元はあるのか

これまでもポイント還元のような仕組みはありましたが、「決済額の○%を還元する」というキャンペーンを大規模に行い、世間に認知されたのはPayPayが始めてでしょう。

※正確には、PayPayはスマホQR決済というジャンルに含めた方がより正確ですが、この記事ではスマホ決済と一括りにさせて頂きます。

その後、規模は違えど、「○○決済をすると、還元される」キャンペーンを各社が行い、「通常の現金支払いよりも、スマホ決済を行うとお得になることがある」という事が世間でも認知されたように思います。

最初に、なぜ、各社が還元キャンペーンを行っているかを確認しておきましょう。

その答えは簡単です。

「還元を行う事によって、自社のサービスを使い始めて欲しいから」

です。

何もメリットがなければ、ユーザーにとって、従来の支払方法(現金やクレジットカードなど)から切り替えようというモチベーションは働きません。

もちろん、「キャッシュレス決済の方が現金を持たなくても良い分、便利」といったメリットはあるのですが、それだけでは弱いのでしょう。

また、スマホ決済だけでも何種類もあり、他社よりも自社の支払方法を選んで欲しい、という事情もありますし、利用者が増える見込みである事を確約する事で、店側への導入を促したいという事情もあります。

どちらにせよ、「自社の決済サービスを早期に広めたい」という事情からなのです。

割引によって自社のスマホ決済を広めるというビジネスモデルは成功するのか

新しい商品を売り出す為に、「無料のサンプルを配る」「割引券を配る」、そういった販促はこれまでも多く行われてきました。

そういう意味では、こうした割引(還元)キャンペーンは全く新しくありません。

しかし、今回のスマホ決済の還元の場合、還元の為に用意した費用は巨額です。2018年末に行われたPayPayのキャンペーン場合で100億円だそうです。

これだけの費用を回収するのは容易な事ではありません。

企業が、それだけの負担をするという事は、それに見合う収益が将来得られると思っての事です。ちょっと不安になる金額ではあります。

スマホ決済業者がキャンペーンを行わざるを得ない事情

では、なぜ、ここまで、企業は必死に還元キャンペーンを行うのでしょうか。

まず、こうした商売においては、従来型の商売と違い、「早期に1強(業界内でダントツの1位)になる事が、商売上、非常にメリットがある」と認識されている、という事情があります。

この為、「競合他社にユーザーを取られたくない」という意識が、これまでの商売とは桁違いに強いと言われています。

逆に言えば、そうしたポジションを確保出来れば、その後は、美味しい商売が出来る為、最初にかかった巨額の費用は、それからゆっくり回収出来ると見込まれているところがあるのです。

こうした事情から、こうしたキャンペーンは正当化され、多くの会社が次々と同じような策を打ち出している訳です。

過去の事例と比べてスマホ決済キャンペーンの成功を分析する

さて、では、こうした還元策による販促は成功するのでしょうか。

消費者からしても、多数の決済サービスを使い分けるメリットはそれほどないでしょう。

ですから、1強になれば、「そのサービスを提供している会社に大きなメリットがあるだろうな」という事までは皆さまも想像して頂けると思います。

では、それが本当に継続するのか?

皆さまは、どう思われますか?

ここで、過去の事例と比較してみましょう。

例えば、マイクロソフトは、Windowsというソフトウェアを作り、それを普及させ、莫大な利益を長年得てきました。

しかし、今では知っている人も少ないでしょうが、昔、Windowsにも競合ソフトはありました。そうした状況で1強になる為に、マイクロソフトは様々な販促活動を行い、そして勝ち残り、その後の収益を得た訳です。

これと同じ事が出来ると思えれば、今回の販促も正しい気がします。

でも、本当に?

皆さまもちょっと考えてみて下さい。

スマホ決済において1強になっても安心出来ない事情

実は、今回のスマホ決済に関しては、1強になっても、それほど安心出来ない可能性があるのです。

それは何故か。

「スマホ決済は、競合相手が容易に現れる事が予想されるから」

です。

先ほどのWindowsの例だと、一旦、Windowsが普及した後に、その牙城に挑む新しい挑戦者はなかなか出てこないでしょう。

それに対抗する為には、Windowsと同じ機能を持ったソフトを開発しないといけませんが、それには大変なコストがかかります。さらに、既に普及している以上、Windowsとの互換性も問われるでしょう。

ですから、これに挑戦するのは難しい。

しかし、スマホ決済はどうでしょうか。

仮に今の勝負が決着し、1社に絞り込まれたとしましょう。

それでも、その1社が安泰だとは思えないのです。

スマホ決済の場合、もし、その商売が美味しいのであれば、必ず、競合他社が現れるでしょう。そして、強力な販促を行い、その1社に挑戦することになるでしょう。

ユーザーにとって、決済サービスを乗り換える事はそれほど難しい事ではありません。スマホにアプリを追加で入れれば良いだけですから。

そして、仕組みを構築するのもそれほど難しいものではありません。

店側の設備の問題はありますが、今回のスマホ決済に関しては、リーダー(端末)も使い回しが出来ます。

販促の費用さえ確保出来れば、数ヶ月で新しいサービスを立ち上げる事は十分に可能でしょう。

そう考えると、意外と、「1強に残れば美味しい商売が待っている」という考えは甘い可能性がある、という事に気づいて頂けるのではないでしょうか。

 

正直な所、こうした販促方法について相談された場合、私たちであれば、「(ビジネスによって)勧めるケースも、勧めないケースもある」という事になります。

どうしたケースであれば勧めるかは、ここまで読んで頂けた皆様であれば、お解り頂けると思います。