最近の分析をもとに、2019年を振り返ってみたところ、
「2019年は、『会社員人生の限界』を皆が考え始めた年、として、記憶に残る年になるかもしれない」
と考えるようになりました。
ですので、今日は、新年のご挨拶に代えて、このお話を。
当社が考える2019年最大のニュースは老後資金問題
2019年も様々なニュースが報じられました。
しかし、当社で「会社員の意識を一番変えたニュースはなにか?」という視点で振り返ってみたところ、
「退職後に年金で生活する為には約2千万円の金融資産が必要(2019年6月) 」
という金融庁からの発表(報告書は後に撤回)であった、という結論になりました。
いわゆる「2000万円問題」です。
別に目新しい話ではないのですが、多くの人の意識を変えた(そして、その変化は、今も続いている)ニュースです。
そして、この変化、意外な所にも繋がっている事が、最近、解ってきました。
意外な消費ダウンの原因
最近、
「消費者の財布の紐が、また固くなった」
と感じていらっしゃる小売業の方は少なくありません。
「消費税が上がった影響」と考えていらっしゃる方も多いようですが、当社で分析してみると、実態は少し違うケースも多いようです。
実は、
「実質的な可処分所得(手取り)が減っている為に、消費が落ちている」
というケースが少なくないのです。
そして、その原因は何かと言いますと、
「老後対策の為に、給与天引きや自動引落で投資を始めた」
という方が多い為であったりするのです。
すなわち、iDeCo(イデコ)であったり、つみたてNISAであったりする訳です。
そして、その投資を始めたきっかけとして多いのが、前述の「2000万円問題」なのです。
老後の為の投資が景気を悪化させるかもしれない
もちろん、将来の為の投資は大事です。
しかし、当たり前の事ですが、投資に資金を振り分ければ、目先の消費にまわせる金額は減ります。本人からすれば、税金や社会保険料が上がったのと変わりません。
この為、この老後資金問題、実は、以下のような動きに繋がる可能性がある事が解ってきました。
消費者が収入の一部を老後の為の投資にまわす
→消費者が消費を控える
→消費が落ち込み、結果、景気が悪くなる
もちろん、給与から投資に資金を振り分けても、それ以上に給与が上がっていけば問題ありません。
しかし、現実には給与が上がっていく実感のある人は少数派でしょう。そして、上記の流れが現実となった場合、景気が悪化して、給与が上がる可能性は、更に低くなっていきます。
結果、悪循環となる危険性すら出てきたように思うのです。
老後の為の投資が、これまでの投資と違う点
そして、もう一つ、今回の「老後の為の投資」を考える上で、注意しないといけない点があります。
それは、
「今回の投資は、成功しても、消費活動には繋がらない」
という事なのです。
実は、これまで投資を行ってきた人の行動パターンとしては、
「投資をして儲かった分の一部では贅沢をし、残りを再投資にまわそう」
というものが多かったように思います。
結果、投資の結果は、消費にまわる効果があったのです。
しかし、今回は、そういった事は想定されません。
儲かったとしても、その結果が手元には返ってこない仕組みになっている人が多いのです(老後に受け取るまで、儲けは再投資される)。
ですから、消費にまわされるお金は、当面、増えないのです。
会社員の限界を感じる人が本格的に増えるかもしれない
老後の為の備えという観点だけで考えれば、この仕組みは正しい面があります。
しかし、ここまでで指摘したポイントをまとめ直すと、
・老後の為の投資を始めると、生活水準は悪化する
・投資で成功できても、当面の生活水寿は改善しない
・多くの人が老後の為の投資を始める事によって、景気には悪影響が出る可能性がある
・給与が上がれば生活水準は回復するが、景気が悪化すると、給与は上がらない可能性は高い
といった内容になります。
この為、目先の生活水準を何とか回復させたい人を中心に、
「現状のまま会社員を続けるだけでは、限界がある」
という実感を持つ人が、増えてきている可能性が高いのです。
生活水準を改善する為の様々な対策
結果、「何がおきるのか」については、様々な方向性が予想されます。
良く収入アップに関して取り上げられているのは、
・副業による収入アップを目指す人が増える
ですが、それ以外にも、
・目先の収入に繋がる投資を本格的に始める人が増える
・起業して収入を増やす人が増える
などの動きが、今後、活発化するかもしれません。
実際、当社でも「資産運用」や「引退」に関する経営者向けのサービスを提供していますが、生活者の方とお話させて頂くと、これまで以上に、こうした領域に関する専門的な情報に関心を持つ方は増えているように感じます。
2020年は、実際に、こうした一歩を踏み出す方が多い年になるのかもしれません。