ビジネスコンサルティングの現場から

各種ビジネス・コンサルティングに携わる担当者が、日頃、「考えている事」や「気が付いた事」を不定期に発信します。

楽天の携帯参入は、サービスの基本スペックで成功するかもしれない

楽天の携帯参入は成功するかどうかをを経営の視点から考える

楽天が携帯電話事業に参入するそうです。

正直、「楽天が携帯キャリアとして勝ち残るのは難しいのではないか」と思っていたのですが、詳しい人に事情を聞いた所、どうも、楽天には勝ち目があるのだそうです。

驚くと同時に、少し考えさせられる点もあったので、今日は、このあたりのお話を。

楽天の携帯電話事業への参入

現在、日本の携帯会社(キャリア)は3社(NTTドコモ、au、ソフトバンク)ですが、楽天の参入によって、一社増える事になります。

楽天には、4000万人超とも言われる巨大ECモールの会員がいます。

当初の報道では、その「会員という資産を活かす」とされていました。

しかし、勝ち残っていく上で、それだけでは弱い。

携帯電話サービスの内容自体も大事でしょう。

しかし、最初に楽天の携帯参入の話を聞いた時、私は、先行3社と比べて、楽天が、それほど他社と差別化出来るような値段やサービスを提供出来るとは思えませんでした。

「赤字覚悟で値段を下げて勝負をするのかな。でも、大手キャリアも体力はあるから楽天が勝てるとも思えないけど…」などと思いながら、様子見をしていました。

楽天携帯が値段を下げられる理由

そんな中、楽天が考えている「自社の値段を下げる事が出来る理由」が見えてきました。普通に発表されているので、ご存じの方もいらっしゃるでしょう。

その技術は、「仮想化」というものです。

新規参入する側としては、既存の設備に引きずられる必要がありません。

ですから、新しい考え方で設備を導入する事が出来ます。非常に真っ当な考え方です。
ただ、それを聞いて、今度は、こんな感想が自然と湧き出しました。

「新しい技術を多用するのか。恐らく、当初はトラブルだらけで大変だろうな。」

しばらく前には、ソフトバンクが通信障害を起こして大問題になったばかりです。

同じような感想を持った方もいらっしゃるのではないでしょうか。

楽天携帯は新技術の導入で失敗しないかもしれない

そんな流れで関心を持っている中、ちょっとした機会があり、こうした通信業界の技術に詳しい人から情報を仕入れる事が出来ました。

その結果、私は、楽天携帯について、見方を変える事になりました。

もしかすると、「私の分析(というほど大したものではありませんが)は間違っていたのかもしれない」と思うようになったのです。

私が接することになった情報によると、

「楽天は、新技術の導入で失敗しない」可能性が高いそうなのです。

正確には、ちょっと違います。

「楽天が導入する新技術は、新技術ではないかもしれない。更に、次世代規格においては、楽天の方が古い事業者になるかもしれない。」

という事でした。

これだけだと、何のことかさっぱり解りませんよね。

 

この分野の専門家ではないので、細かい事は解りませんが、私が理解した所によると、こういう事です。

楽天は、「完全仮想化」という技術で初期投資コストを大幅に下げようとしている。

そして、この完全仮想化は、要するに、オープンシステム(様々なメーカーが作る安い部品を組み合わせて作る機械)をベースにしており、更に、ソフトウェアで処理をする割合を大幅に高める事で、安価で柔軟なシステム構築が可能となる。

そして、ここからが大事なのですが、楽天が導入しようとしている技術は、実は海外では既に導入され、何年も運用されている実績がある

おまけに、楽天は、その技術の運用に携わった人材を既に自社に引き入れている。

だから、楽天がコストを下げる為に導入するのは「新技術である」という考え方は、世界的に見れば「間違っている」のだそうです。

 

更に、携帯の通信の規格は定期的に更新されますが、「次の規格として準備されている『5G』(今は「4G」)に、この楽天が導入する技術は既に対応している可能性が高い」のだそうです。

ですから、楽天がサービスを開始させると、裏側では、「楽天は、『5G』に対応した仕組みを他の会社よりも先にスタートさせている」ことになるのだそうです。

おまけに、この楽天が導入する方式、他の通信会社が導入している現行の方式よりも、「障害にも強い」という特徴があるらしいのです。

そして、楽天が導入しようとしている通信方式でコストダウンが実現した結果、海外では、それをきっかけに業界再編まで既に起きているそうなのです。

楽天携帯への期待

ここまで理解して、「う~ん」とうなってしまいました。

海外のこととはいえ、この時代です。

そんなに素晴らしい技術があるのであれば、どこかの会社が日本にも導入しているだろう、と勝手に思ってしまっていました。

そして、そうした「思い込み」から、「楽天が参入するにしても、コストを下げるのに使える、そんなに美味しい話は転がっていないだろう」と考えてしまっていました。

しかし、上で書いた情報が本当なのであれば、国内では新規参入がなかった為に、どこの会社も、そうした新技術を積極的に導入しようとしてこなかっただけなのかもしれません。

「通信会社が巨額の利益を上げており、政府が携帯料金を下げるように圧力をかけている」といったニュースに接している身としては、こうした事が事実なのであれば、少し悲しい気がします。

 

もちろん、ここまでの情報が全て正しかったとしても、楽天が円滑なサービス立ち上げに成功する保障はありません。

しかし、「競争原理が働くことで、世の中がうまくまわる」という考え方が、様々な前提となっている世界に生きている以上、「新しい仕組みを日本に持ってきてくれる(らしい)楽天には、少し期待したい」とは思い始めました。