皆さまに質問です。
「今、日本のパソコンメーカーは何社あるでしょうか?」
ビジネスに詳しいと自負されている方には、ぜひ、当てて頂きたいと思います。
もっとも、「詳しい」と自負されている方の中には、「『日本の』という言葉の定義による」と指摘される方もいらっしゃるかもしれません。
その場合は、「日本に本拠地のあるパソコンメーカーで、外国資本のグループに含まれていない」といった定義で考えてみて頂ければ、と思います。
さて、答えは出ましたでしょうか。
実は、この質問、答える方によって、「正解を外す(間違える)」ポイントが複数あります。
まず、ビジネスの動向に詳しくない方の場合、
「NECでしょ。東芝でしょ。富士通でしょ…」
と、始まり、ご自身が覚えているパソコンメーカーの数(おおよそ、3~5社くらいになる事が多いように思います)を回答されます。
ご自身が使ったり、見た事のある「日本のパソコン」のメーカーを挙げている訳です。
が、これらは間違いです。
より正確には、「残念ながら、既に間違いです」と言った方が良いかもしれません。
NEC(日本電気)も東芝も富士通も、パソコン事業は海外メーカーのグループに入ってしまっています。
これらの日本を代表してきたパソコンメーカーの現在を、簡単にまとめておきますと、
<NEC(日本電気)>
パソコン事業は、2011年にレノボ(中国)傘下に。
<富士通>
パソコン事業は、2017年にレノボ(中国)傘下に。
<東芝>
パソコン事業は、2018年にシャープ(台湾)の傘下に。
なお、現在の会社名はDynabook株式会社。
といった状態です。
次に、新聞などでパソコン事業の動向について勉強されている方の場合。
「ほとんどのパソコン事業は外資に行ってしまったって事でしょ。知ってるよ。」
という反応が、まず返ってきます。
その上で、
「純粋に日本のパソコンメーカーっていうと、もう、パナソニックくらいしか残っていないかもね。あ、ソニーのパソコン事業(VAIO)が独立したんだっけ。あれも国内と考えられるから、合わせて2社かな。」
といった回答が返ってきます。
更にもう少しパソコン事業に詳しい方の場合には、
「あ、エプソンもパソコン作っているね。」
などと、もう数社、追加される事もあります。
どこを含めるかによりますが、この場合も、結局、3~5社くらいになる事が多いように思います。
ちなみに、たまにASUSやLENOVOを国内メーカーだと勘違いされている方もいらっしゃいますが、これらは外国メーカーです。
さて、ここまでの回答、実は、全て間違いです。
どこが間違っているのか。
実は、日本には、マンションの一室でパソコンを組み立て、販売しているような業者がたくさんあるのです。
全てのメーカーを網羅した資料は存在しないはずですが、100では収まらないはずです。
お疑いであれば、「自作パソコン 販売」などで検索してみて下さい。
皆さまが聞いた事もないようなメーカーが多く見つかるはずです。
そんな業者はパソコンメーカーとは言えない?
そう思われた方もいらっしゃるでしょうね。
そのお気持ちは解らなくもありません。
しかし、です。
では、
「貴方が考えるパソコンメーカーと、マンションで細々とパソコンを組み立てている業者の違いは何か?」
と問われた時、回答できる方はいらっしゃいますか?
もちろん、規模は違うでしょう。サポート力も違うでしょう。場合によっては、オリジナルのソフトウェアの部分での差もあるかもしれません。
しかし、それで「パソコンメーカーと言えるかどうか」を分けるのは、あまりに乱暴です。
パソコンを製造して販売さえしていれば、十分にパソコンメーカーとしての要件は満たしているはずです。
そして、実際、大手のパソコンメーカーであっても、そのパソコン製造の実体は、
「ほとんどの部品は、社外から仕入れて組み立てているだけ」
なのです。
ですから、パソコン製造として、両者の決定的な違いはないのです。
ちなみに、当社でも経営改善に繋がるIT支援の一環として、パソコンの修理や部品交換に関するサービスを提供していますが、そういった事が出来るのも、実はパソコンメーカーが、ほとんどの部品を社外から仕入れているからこそ、なのです。
もし、パソコンの内部がパソコンメーカーの自社部品ばかりで占められていたのであれば、そのメーカー以外では、そのパソコンの保守を取り扱う事は出来ないでしょう。
小規模なパソコンメーカーが、自社で部品を調達し、大手パソコンメーカーと互換性のある自社パソコンを製造販売できるのも、同じ理由です。
さて、ここまでの流れで既にお解り頂けていると思いますが、国内大手企業のパソコン事業は、そのほとんどが国内メーカーの事業としては残りませんでした(残せませんでした)。
完全に事業が整理されてしまった訳ではなく、外国メーカーの一部として、まだ残ってはいます。それは、少し嬉しい気もしますが、やはり、悲しい気もします。
そして、上で書かせて頂いた通り、パソコン事業においては、「部品の性能」とは違う所で勝負が行われてきました。
少なくとも、「技術力」といった、他社に追いつくのが難しいような所で勝負が付いた訳ではないのです。
なぜ、日本のメーカーとしてパソコン事業を残せなかったのか?(別に、自社のパソコン事業として残す、という事にこだわらず)。
経営の視点からは色々と考えさせられます。