ビジネスコンサルティングの現場から

各種ビジネス・コンサルティングに携わる担当者が、日頃、「考えている事」や「気が付いた事」を不定期に発信します。

日産とゴーン氏の報道から、日本に欠けていた経営要素を考える

日産 ゴーン カルロス・ゴーン

日頃、経営者の方と雑談させて頂いていても、やはりメディアで取り上げられているトピックス(特に企業や経営者が関係するもの)は良く話題になります。

最近で言えば、やはり日産自動車のカルロス・ゴーン氏(元会長、以下、ゴーン氏)の話題は欠かせないでしょう。

彼が有罪なのか無罪なのか、といった問題については、ここでは取り上げません。ルノー社との関係についても、同じくです。

 

ここで取り上げるのは、経営に携わる人間にとって、

「日産自動車(とゴーン氏)の過去の経営から、我々が学べる事は何か」

「日産自動車の復活から、我々が忘れてはいけない事は何か」

という事です。

実は、こうしたニュースは、日頃、振り返る機会がない(忘れてしまっている)事を振り返る良い機会になるのではないでしょうか。

 

お忘れの方もいらっしゃるかもしれませんので、まず、日産の復活劇について、少し復習しておきましょう。

ゴーン氏が日産自動車(以下、日産)の経営に関与するようになったのは、約20年前の1999年の事でした。

日産は経営に行き詰まっており、自力で成長路線に戻るのは夢のまた夢という状況でした。この状況において、ルノー社からゴーン氏がやってきて、「日産リバイバルプラン」と呼ばれる再建計画を策定、コストカットを強力に推し進めました。

そして、皆様ご存じの通り、日産は業績を急回復させたのです。

実際には、コストカット以外にも日産が業績を改善する事が出来た要因は色々とあるとは思うのですが、メディアで取り上げられたのは、人員削減や下請け企業の見直しなどによるコストカットの部分が大きかったように記憶しています。

どちらにせよ、ゴーン氏のリーダーシップによって日産が大きな改革を実現出来た事は、疑いのない事実だと思われます。

 

そして、恐らく、

「ゴーン氏がいなければ、日産はここまで順調には復活出来なかった」

のではないか、と思われます。

もしかすると、他の人材でも、違ったかたちで復活は出来たかもしれませんが、そうした可能性は想定し出すときりが無いので、おいておきましょう。

 

そう。日産には、ゴーン氏が必要だったのです。

 

少し言い換えます。

「日産には、ゴーン氏のようなリーダーシップに長けた人材が必要だった」

のです。

 

そして、日産は自力では、そういった人材を用意出来なかった(だから、経営難に陥った、とも言えるでしょう)。

これは、別に、日産に限った事ではありません。

当時の日本企業は、そういった人材を社内に抱えていませんでした。

そもそも、そういった人材が求められていたかどうかも怪しかったように思います。

 

しかし、日産の復活には、そういった人材が必要でした。

 

「自社で、ゴーン氏のような人材が必要となるような事態は発生するのだろうか」

「経営不振にさえならなければ、ゴーン氏のような人材は不在でも良いのではないか」

「いや、ゴーン氏のような人材が社内にいないと、日産のように自社も経営不振になるのではないか」

こうした事を考えた経営者は少なくなかったでしょう。

だからこそ、ゴーン氏が率いた日産の復活劇は、単なる「一自動車企業の成功事例」というだけでなく、多くの日本企業にとって、「注目すべき一大ニュース」であった訳です。

 

そして、あれから20年。

更にグローバル化が進み、経営の難易度は上がっていると言えるでしょう。

あの時、日産の復活劇を日本人が目にして、企業経営が成功する為に欠けていた一つの要素を理解しました。

今なら、日本企業は、ゴーン氏のような人材を外部(外国)に頼らなくても準備出来るのでしょうか。

仮に、第二の日産が生まれたら、その時は、ゴーン氏なしでやっていけるのでしょうか。

 

「ゴーン氏のようなやり方は間違っていた」

「ゴーン氏のような存在を求める考え方は、もう古い」

そういう考え方もあるでしょう。

もし、そうであれば、ゴーン氏のような人材がいなくても、今後、日本企業はうまく成長していけるのでしょうか。

 

みなさまの会社ではいかがですか?
ゴーン氏のような存在は、今後も不要ですか?
それとも、ゴーン氏のような存在は、もう準備出来ていますか?

 

今回のニュースは、日産が陥った危機と、そして、その後の日産の復活を思い出すには良い機会です。

内部統制の問題など、様々な点について自社を再点検する良い機会にも出来ますが、まずは、こうした点について考えを巡らせてみる良い機会としたいと思います。