新聞を読む人は減ってきているとは思いますが、それでも、ビジネスの世界では、「皆が、新聞を読んでいる前提」で話が進む事は未だに少なくありません。
ですが、その「新聞の紙面」、実は、「同じ名前の新聞」の「同じ日付の紙面」であっても、同じ内容とは限らないことをご存じですか?
「地域面が違うって話でしょ?」と思われた方、鋭い。
ですが、それだけではないのです。
実は、先日、ちょっとした事件がありました。
簡潔に言ってしまうと、「〇〇新聞の☆面の△△の所に載っていた、あの記事だけどさ」という会話が通じず、トラブルになっている現場に遭遇したのです。
普段は大した問題にはならないのでしょうが、業界人として知っていないと不味い話であったらしく、話が通じないせいで険悪な雰囲気にまでなっていました。
もちろん、これは、会話の本人達が読んでいた紙面が同一ではなかった事が原因です。
しかし、「新聞の紙面の内容が人によって(ちょっとした地域差によって)異なる事がある」、という事は、意外と知られていないのかもしれません。
ですので、ここで取り上げてみる事にしました。
地域面による新聞の紙面の差
まず、多くの全国紙には、「地域面(地方版)」と呼ばれるものがあります。この面は、同じ新聞であっても、地域によって違う内容が載ります。
これは、一番良く知られている点だと思います。
参考までに、日経新聞だと、以下の地方版が存在します。結構な数ですね。
・北海道経済
・東北経済
・新潟経済
・長野経済
・北関東経済
・首都圏経済
・首都圏千葉
・首都圏埼玉
・首都圏東京
・首都圏神奈川
・静岡経済
・中部経済
・北陸経済
・関西広域経済
・関西経済
・中国経済
・広島経済
・四国経済
・九州経済
・沖縄九州経済
(2019年7月調査、電子版で見られるようになっている地域経済の一覧)
※日経の地域面は「地域経済」という扱いなので、~経済、と「経済」が付きます
ですから、この範囲を超えて移動すると、相手は違う地方面を読んでいる事になります。
ちなみに、宣伝(広告)なんかも、地域によって違っていたりします。新聞社は、「大阪支店管轄分の広告」といったかたちで広告を募集しています。
更に、テレビ欄は地域ごとに異なるのが通常ですし、天気欄が異なる事もあります。新聞社によっては、一部の社会面も少し変えていたりするようです。
版による新聞の紙面の差
さて、今日の本題です。
実は、新聞には「版数」と呼ばれる概念があります。
すなわち、「その日の、第〇版の新聞紙面なのか」という事です。
以前に関係者の方に聞いた限りの情報ですが、こういう事のようです。
新聞製作には「締め切り時間」があり、その時間に間に合わせて紙面を完成させます。
しかし、この「締め切り時間」、基本的には、「一番遠くの場所に届ける為の締め切り時間」が設定されています(この時間が、結構、早い時間なのだそうです)。
当然、その後も、時間と共に新聞に掲載したい情報は追加されます。新しいニュースが飛び込んでくる事もあれば、掲載している記事についての詳しい情報が判明する事もあるでしょう。
この為、締め切り時間を遅らせても大丈夫なエリアについては、もっと新しい紙面を作って出せるようになっているのだそうです。
お手持ちの新聞を見て頂くと、最上部に小さく〇版と書いてあると思いますが、この数字が、この版を表す数字です。
しかし、この版数を意識している人は、ほとんどいません。
「どこを境に違う版が届いているのか」なんて事を知っている人も、ほとんどいないでしょう。
ですから、冒頭のような、「同じ新聞の紙面を読んでいるはずなのに内容が違う」という事が起きてしまう訳ですね。
紙面のカラーと白黒の差は意外とインパクトに差がある
この他の紙面の差についても、触れておきましょう。
小さい差のようで、意外と大きい違いなのが「カラーと白黒の差」です。
同じ紙面でも、カラーで印刷される地域と、白黒で印刷される地域があります。
記事の内容は基本的に変わりませんので、違いは大きくないように思われるかもしれませんが、例えば、記事に添えられた写真が与えるインパクトが、カラーだと大きいのに、白黒では大したことがない、といった事はあります。
そういった機会に遭遇すると、やはり、人は写真のインパクトで記事の重要性を判断しているのだな、と感じたりもします。
夕刊があるのも当然と思っていませんか?(おまけ)
最後に、似た話をもう一つだけ。
首都圏で新聞を購読していると、朝刊と夕刊の2つを合わせて新聞だと思っている方が少なくありません。
しかし、同じ新聞でも、「夕刊が発行されていないエリア」は存在します。
これは、ちょっと出張や旅行に行くとすぐに解る事ですが、そうしたエリアで夕方に新聞を買いに行っても、夕刊は売っていません。ご注意下さい。
以上、「同じ新聞を読んでいても、相手と自分では同じ紙面を読んでいるとは思わない方が良い」という小話でした。