ビジネスコンサルティングの現場から

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次世代のデジタル広告ありきの競争に私達はどう対応すべきなのか?

デジタル広告 価格競争 デフレ デフレーション 物価下落

この記事は、次世代のデジタル広告に関する記事の後編となります。

まだお読み頂いていない方は、以下のリンクから前半の記事をお読み頂いた上で、この記事に戻られる事をお勧めします。

www.yoshida-ri-blog.com


新世代のデジタル広告が普及すると、「モノを販売する事業者は、モノを販売する以外の収入が得られるようになる」という事。そして、その結果、「モノの販売による利益を重要視しなくなる可能性がある」という事を前編でご紹介しました。


では、この変化によって、世の中にはどのような影響があるのでしょうか。

後編では、各プレイヤー(企業など)の具体的な行動について、見て行きたいと思います。


新世代のデジタル広告が普及した場合、まず、前編で取り上げた通り、「デフレ(デフレーション=価格下落)の圧力が発生する可能性があります。

そして、新世代のデジタル広告による収入が得られる小売店にとっては、「モノの販売によって得られる利益」の重要性が下がる事になります。

しかし、解説するまでもなく、そのような事が常態化すると、これまで通りの商売をしてきた小売業は困ってしまう事になります。

なにせ、「モノの販売は赤字でも構わない」と考えている相手と価格競争をしないといけなくなる訳ですから。

そのような店が生き残る方法としては、2つの方向性が考えられます。

まず、1つの方向性としては、「価格競争を諦めて、他の要因で顧客に選んで貰うようになる」という方向性があります。

これは、大手企業やネットと戦っていく上で、今でも多くの小規模店舗が選択している方向性ではあります。

例えば、「大手では対応できないようなカスタマイズに対応する」「アフターサポートの充実を前面に打ち出した販売を行う」など。

なかなか難易度の高い方向性ではありますが、小売業の中には、改めて、この方向性に注目する所も出てくる事でしょう。

そして、もう1つの方向性としては、「自分達もモノの販売以外の収入を得る」という方向性があります。

すなわち、新世代のデジタル広告による収入を積極的に取りに行く方向性です。

ただし、広告を得たり、販売データをお金にしようと思うと、一定の販売量がないと難しい面があります。

この為、小さいお店の場合には、他のお店と共同で事業を行ったり、大手企業と組んだりするしかないでしょう。

具体的には、そのようなお店が参加できるようなプラットホームが生まれる事になるでしょうから、そのような仕組みに参加して収入を得る事になるでしょう。

ただし、大手小売業との勝負となった場合、それでも、競争は厳しいように思います。

結果、新世代のデジタル広告を十分に活用している大手小売業との差は、現状よりも更に開く事になるかもしれません。

もっとも、新しい収入を得る道が開ける事も確かですので、様々な工夫によって、うまく波に乗れる小売業も出てくるかもしれません。


次に、消費者にとっての影響について。

今回の影響は「物価下落」に繋がる可能性が高い流れですので、基本的には歓迎される事になるでしょう。

ただし、消費者の方には、2点ほど覚えておいて頂きたい点があります。

1つは、今まで以上に、「個人の購買データの分析が進み、よほど気をつけないと行動を企業に操られるようになる危険性がある」という事。

※デジタル広告をめぐっては、現在でも、個人情報の取り扱いなどで様々な問題が指摘され、また、ネット企業への罰金や訴訟が相次いでいます。

もう1つは、第二世代のデジタル広告の普及によって、現在よりも大企業の力が強くなると、結局、小売り市場の独占・寡占が進み、長期的には、「価格競争が弱まる(値段が下がる圧力が弱まる)可能性がある」という事。

そのような事になると、消費者にとっては大損害という事になります。

ぜひ、そのような事にならないように、一定の監視(と対策)は国などにお願いしたい所ではあります。


以上、この新世代のデジタル広告が普及する流れは止められないと思いますが、せめて、それが少しでも消費者にとってプラスとなるかたちになっていく事を願って、このエントリを終わりにしたいと思います。

※本稿では、個人情報の収集や過度の価格競争を行う事の違法性については、原則、考慮していません。