ビジネスコンサルティングの現場から

各種ビジネス・コンサルティングに携わる担当者が、日頃、「考えている事」や「気が付いた事」を不定期に発信します。

それでも新型コロナウイルスPCR検査を積極的に勧める理由

新型コロナウイルスのPCR検査の是非


新型コロナウイルスについてのPCR検査を増やすべきかどうかについては、様々な意見があるようです。

受けたいと考えている人は全員、PCR検査を受けられるようにするべきだ

という賛成派(推進派)と、

PCR検査の数を無闇に増やすべきではない

という反対派(慎重派)に分かれているようです。


企業においても、

自社の従業員に、PCR検査を受けさせるべきかどうか

という検討をしている所は少なくありません。

医師の間ですら意見が割れているようですので、この話題は避けてきたのですが、既に社員のPCR検査実施に踏み切った会社も増えてきましたので、ここでも取り上げる事にしました(あくまで、企業での検討に絞った話です)。


現時点での意見を結論から申し上げると、

従業員と企業の双方が受けたい(受けさせるべき)と考えているケースにおいて、企業が仲介・取りまとめを行うのであれば、PCR検査を積極的に受ける(受けさせる)事には賛成

という事になります。


ただし、この賛成意見の表明には、いくつかの前提(条件)があります。

・対象が、雇用主が「受けさせる必要がある」と考えている従業員であること

・企業が検査を仲介し、結果についての十分な説明を本人にできること

・検査を受けたり、その結果が陽性であったりする事による不利益が、(少なくとも雇用先との関係においては)本人にないこと

などが主な前提です。


PCR検査に賛成の立場を取る理由はシンプルに、

自社の従業員が、顧客や他の従業員に感染させる可能性を少しでも減らせるのであれば、その対策となり得る手段を否定すべきではない

からです。


企業の「自社のサービスを少しでも良いものにしたい」という考え方は否定されるべきではないでしょう。そして、顧客に接する「従業員の健康状態」も、自社のサービス品質の一部として考える事はできます。

また、「事業存続の為に、少しでも自社の従業員が感染するリスクを減らしたい」という考え方も否定されるべきではありません。

そして、新型コロナウイルスに感染している可能性のある従業員を「一日でも早く」・「少しでも多く」把握する事は、こうした目的の為に有効なはずです。

ですから、「新型コロナウイルスのPCR検査を従業員に受けさせたい」という企業の方針を否定したくはないのです。


その一方、PCR検査の数を増やすべきではないという意見がある事も承知はしています。

反対派(PCR検査の数を増やすべきではない)と考えている人が主張している理由は、以下のようなものであると理解しています(他にもありましたら、教えて頂ければ参考にさせて頂きます)。

・偽陰性の可能性

・偽陽性の可能性

・陽性者を入院・隔離する事による施設の逼迫

・検査による医療資源の消費

・検査を受ける事自体による感染拡大

・税金や健康保険の無駄使い

 

この中でも特に重大なものは、「偽陰性」の問題でしょう。

皆さまもご存じの通りだと思いますが、「実際には感染しているのに、PCR検査では陽性という結果が出ない(陰性となる)」ケースが一定割合であるそうです(30%程度と言われていますが、検査方法によっては、更に高い可能性があるという報道もあります)。

ですから、「PCR検査で陰性であった為、自分は安全だと思い込んで行動し、他の人に感染させてしまう」ような人が出てくる事は、もちろん避けなければなりません。

前提として、「企業が検査を仲介し、結果についての十分な説明を本人に説明できるならば」という条件を付けているのは、その為です。

偽陰性の可能性については、しっかりと本人に説明すべきです。そして、陰性であっても、「感染対策をしっかりと行い続ける」事は前提と考えています。

なお、現時点で「貴方は絶対に感染していない」という証明が出来る方法はないと理解しています(強いていえば、14日強の厳しい条件での隔離後の状態くらいでしょうか)。

そもそも、今日の朝の検査で陰性であったとしても、今日一日の間に感染するかもしれない訳ですから、ウイルスと接触する可能性のある日常を送っている限り、「自分は感染していない」などと主張する事は不可能なはずです。


その他の問題点についてですが、まず、「検査による感染拡大」については、唾液での検査が可能になった事により、リスクはかなり低減されたと認識しています。

「偽陽性」の存在についても問題とは思いますが、万一、陽性者を把握するのが遅れ、その陽性者が周囲の何人もに感染させるマイナス効果と比べれば、小さい問題であると考えます。

業務の都合上、人(同僚・顧客)と接しなければならない従業員がいる企業は少なくありません。

もし、感染している事に気付くのが遅れ、勤務を続けた場合、その人から何人・何十人という感染者が生まれてしまうかもしれません。それによる損失は、相当なものになるはずです。

「陽性者を入院・隔離する事による施設の逼迫」「検査による医療資源の消費」「税金や健康保険の無駄使い」についても同様に考えます。

ただし、「偽陽性」の可能性がある以上、陽性判定を受けた本人への不利益は最低限のものであるべきですし、現在の無症状者の扱いについては、医療側の負担を減らす為にも、改善すべき点はあるかもしれません。

また、雇用先以外からも様々な不利益を被る可能性もあるでしょうから、(症状が出ていないのであれば)本人の希望で「PCR検査を受けなくても良い」という自由も、一定程度、認められるべきであるとは考えます。


このように、様々な条件付きとはなってしまいますが、

・新型コロナウイルスによる患者を増やさない為には、感染者から他の感染者を出来る限り生み出さない事が大切

であり、

・新型コロナウイルスによる感染を避けたいという強いニーズが存在する

・当初とは異なり、検査を受ける事による感染拡大の可能性は低くなったと考えられる

といった事情を勘案すると、現時点では、「企業が必要だと考えている人に、積極的にPCR検査を受けて貰うことには、デメリットよりもメリットの方が大きい」と考えています。