新型コロナウイルス(COVID-19)の終息が未だ見えません。
これに伴い、
「自社が開催する予定だったイベントを中止すべきか」
という事を、各社、悩まれているようです。
素直に中止を決められた方は良いのですが、中止を決められない(決めきれない)方の為に、考え方の一つを公開します。
特に、上司や社内間の調整で苦しまれている担当者の方に参考にして頂ければ幸いです。
なお、この記事を読んで頂いて、その上でも「中止しない」とお決めになるのであれば、それは、一つの決断かと思います。
※ここでのイベントとは、「一定数の集客があり、感染を完全に防ぐ事が困難な状態が想定されるもの」を指しています。
過去の判断を引きずって今回の新型コロナウイルスに関する判断をすべきではありません
中止を迷われている方(会社)の中には、
「東日本大震災の直後ですら、中止しなかったのだから…」
や、社歴の長い会社だと、
「戦争中ですら、世の中の風潮に流される事はなかったのに…」
とおっしゃる方もいらっしゃいます。
しかし、最初に明確に申し上げますが、そういう考え方は止めて下さい。
今回は、中止すべきかどうかを考えるポイント(理由)が全く異なります。
新型コロナウイルスがあってもイベントを開催した場合のリスク
では、今回の新型コロナウイルスでは、なぜ、「自社イベントの中止」を検討すべきなのでしょうか。
判断して頂けるように4つの段階に整理してご説明します。
第1段階
最初にあるのが、
「社会的に、イベントは自粛しないといけない雰囲気なので」
「他のイベントも、みんな止めているから」
といった理由で、開催を見送るべき、という判断。
こうした「世の中の流れに合わせる」事も大事だったりはしますので、こうした理由で中止をお決めになるのであれば、それも悪くはないと思います。
そういった行動が、世の中に評価され、自社のブランドイメージを守る事に繋がる場合もあります。
もちろん、「来客数が予想を下回る」「来客者に、期待通りの反応・行動を取って貰えない」といった事を理由に中止にされるのも宜しいかと思います。
ただし、中止するかどうか迷っているイベントに「相当な社会的な意味がある」と自信を持っておられるのであれば、こうした点への配慮だけでは、中止すべきではないでしょう。
第2段階
次に考えるべきなのは、
「事業継続的に、そのイベントを中止しなくて良いのか」
「社員を危険にさらしてまで、やるべきイベントなのか」
という判断。
イベントを開催すれば、新型コロナウイルスに感染している人と、自社の社員が直接・間接的に接触する危険性が高まります。
結果、自社の社員が感染してしまうかもしれません。
更にその結果、社内で感染が広がり、多くの社員が通常の勤務を出来なくなる可能性もあります。事務所の閉鎖に繋がる可能性もあるでしょう。最悪の場合、複数の社員を永遠に失ってしまう危険性すらあります。
社員という財産を失う事についても真剣に考えて頂きたいですし、その結果として、事業が続けられなくなる可能性についても、視野に入れて頂きたいと思います。
そこまでの覚悟をしてでも、開催すべきイベントなのかどうか。
ただし、こうしたリスクは、イベントを開催しなくても存在します。
イベントがなくても、他で感染した社員が出社して、社内で感染を広める事もありますし、仮に自宅勤務であっても、その社員が家族からうつされる可能性もあります。
あくまで、「社員の感染リスクが増える」という考え方で考慮すべきポイントです。
第3段階
「お客様を病気にしてしまうかもしれないリスクがあっても、開催すべきか」
イベントを開催すれば、「お客様からお客様」や「出演者や自社スタッフからお客様」に感染があるかもしれません
今回の新型コロナウイルスが無症状の人から他の人にうつる以上、どれだけ体温検査などをしても完全な対策とはなりません。
そして、客層にもよりますが、治療法が確立していない事もあり、感染者を出してしまった場合、「一定確率で、そのお客様の重症化」が起きます。
「自社の大切なお客様を命の危険にさらす事になるかもしれない」というリスクを負ってでも、そのお客様を呼ぶべきなのかどうか、という点は十分に考えて下さい。
このようにお話すると、
「とはいっても、確率論でしょ。きっと大丈夫でしょ。」
と仰る方がいらっしゃいます。
ですので、もう少しだけ付け加えます。
平常時、
「自社が提供する商品・サービスには、不良がないように全力を尽くしている」
という会社は多いでしょう。
もし、その考え方に同意されるのであれば、
「自社が開催するイベントにおいても、お客様の安全が確保されているのは当然」
であるはずです。
それが確保出来ないイベントを開催するという事が、「自社の平常時の商品・サービスの開発・提供のポリシーと比べて、どうなのか?」という事は冷静に考えて頂きたいと思います。
もし、
「99%の確立で、イベントを開いても問題が起こらないはずだから中止したくない」
と、お考えであれば、今後、その会社は、
「1%の確立で、商品・サービスに不良品が混じっていても仕方が無い、というポリシーで運営されている会社」
と、世の中から判断されても仕方ない、という覚悟をして頂きたいと思います。
もっと厳しい事を言わせて頂ければ、
「大量に出荷する農産物のうち、食べたら死ぬかもしれない毒薬まみれのものが1つだけ混じっている可能性がある」という事が解っているのに、それを気にせずに出荷する農家がいたとしましょう。
貴方はどう思いますか?
今回の判断は、それに近いと考えるべきです(実際に、新型コロナウイルスで死者は出ているのですから)。
ただし、それでも、開催すべきイベントはあるかもしれません。
第4段階
そして、最後。
当たり前の事のはずなのに、意外と、企業での判断については、この点が抜け落ちている会社が多いような気がします。
それは、万一、感染者を出してしまった場合、
「その感染者は、他の人にうつす側になってしまう」
という事。
結果、
「自社のイベントに来てくれた、大切なお客様を、犯罪者の気持ちにさせてしまうかもしれない」
というポイントです。
イベントに来てくれたお客様が、家に帰って、自分の大切な人(ご自身の「子供」や「高齢の両親」かもしれません)にうつしてしまうかもしれません。
更に、そのお客様は、何十人・何百人という、その地域で感染を拡大させる大元になってしまうかもしれません。
自分が感染元になったと解った時に、そのお客様は、どんな気分になるのか(最悪のケースでは、その結果、死亡者が出てしまうかもしれません)。
それも考えて頂きたいと思います。
今は、それが具体的にイメージできないからこそ、
「(自分が感染しても構わないから)イベントを中止するな」
と申し出てくる、お客様もいらっしゃることでしょう。
しかし、万一の場合の事は、そのお客様ではなく、「イベントを開催する会社」側が考えるべき事です。
それが、イベントを開催する会社の責任です。
そして、そこまで考えても、そのイベントを開催する意義はあるのか、という事を十分に考えて頂きたいと思います。
※「犯罪者」というのは、刑法の定義ではなく、あくまで、そういう「気持ち」という意味で書いています。念のため。
新型コロナウイルスが収まる前にイベントを開催・中止判断する為の拠り所
長くなってしまいましたが、ここで書いた内容は、別に、目新しい内容ではないと思います。
しかし、実際にイベントを中止する側になると、
「これだけ準備してきたのに…」
「中止した場合の損失が…」
といったマイナス面が頭によぎってしまうようです。
しかし、事業にリスクは付きものです。
どれだけ準備してきても、今回の件に限らず、予想外に損失が出る時は出るものです。
判断の最後の砦となるのは、
「その会社が事業をやっていく上で大事にしているポリシー」
であったり、
「日頃から、社長が社員に言い続けていること」
「社員が、お客様との関係で大事にしてきていること」
といったものです。
そういった、「いつもの価値観」を改めて振り返って頂き、その上で、この記事で記載したポイントを踏まえて、ぜひ、その会社なりの判断をして頂きたいと思います。
この事態を乗り切れる事を、当社も切に願っております。
がんばりましょう。