新型コロナウイルスによるパンデミックで変わった事の一つに、商業施設など共用の場での「ハンドドライヤーの使用禁止」があるように思います。
「ハンドドライヤーを使用禁止する必要はないのでは?」といった意見もあるようで、経団連のガイドライン改訂(ハンドドライヤーの使用停止を削除)は、広く報道もされました。
しかし、先日、この件が話題になった際、
「実は、ハンドドライヤーの禁止は、経済にとってプラスなのでは?」
という意見が出ました。
ちょっと面白い視点だと思いますので、ここで紹介させて頂こうと思います。
「ものが売れない」などと悩まれている方にとっては、参考にして頂けるポイントがあるかもしれません。
さて、ハンドドライヤーを見た事がない方は少ないと思いますが、「ハンドドライヤー」という用語でピンと来ない方はいらっしゃるかもしれませんので、一応、最初にご説明させていただきます。
自宅にある方は珍しいかもしれませんが、オフィスや商業施設などのトイレにあって、洗った手を入れると、風で水滴を飛ばしてくれるアレです。エアータオルやジェットタオルとも呼ばれます(ジェットタオルは三菱電機の商標)。
近年は、ハンドドライヤーがない商業施設のトイレを探す方が難しいほど普及していました。
しかし、新型コロナウイルスの広がりと共に、「ハンドドライヤーを使うと、コロナウイルスがまき散らされる」という事で、ほとんどの商業施設がハンドドライヤーを禁止する事になりました。
そして、未だに多くの施設で、ハンドドライヤーは使用禁止になっています。
「しっかりと手を洗った後で使うのあれば、ウイルスが飛び散るリスクはないのではないか」という意見もあるようですが、綺麗に手を洗わずに使う人もいる可能性がある為、禁止する意味はあるのでしょう。
ちなみに、先日、公共の男性用トイレ数カ所で観察してみたのですが、指を手で濡らすだけ(時間にして1~2秒程度)でトイレを出て行く人は、すぐに何人か発見する事が出来ました。
※経団連は「新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」を2021年4月に改訂し、ハンドドライヤーの利用停止に関する記述を削除しています。
さて、前置きが長くなりました。本題に入りましょう。
なぜ、ハンドドライヤーを禁止すると、経済にとってプラス(経済効果)があると考えられるのか。
それは、ハンドドライヤーが禁止されたとしても、ハンドドライヤーの売上には影響はなく、追加で、これまで以上に需要される(購入される)商品が生まれている可能性があるからです。
すなわち、合計すると、従来よりも需要が増している(消費が活発になっている)可能性があるからなのです。
もし、何かの機器を使用禁止にする事になり、それによって、その機器の売上が減少するのであれば、それは経済にとってマイナスとなる可能性があります。
しかし、ハンドドライヤーに関しては、そういった事は考えづらいと言えるでしょう。
ハンドドライヤーを設置しようとしている施設が、「今は使用禁止にするしかないから、ハンドドライヤーの設置自体を止めておこう」とは考える事は、まずないからです。
新規にオープンする施設のほとんどでは、近い将来に使用禁止が解除される事を見越して、ハンドドライヤーの設置自体は行うはずです。
実際、最近オープンした施設を何カ所か訪問する機会がありましたが、ハンドドライヤーは設置されていました(使用できない状態にはなっていました)。
ですから、ハンドドライヤーの需要が大きく落ち込むという事はないはずなのです。
また、ハンドドライヤーの使用禁止に伴って、ハンドドライヤーに関連する「何らかの需要」が落ち込むのであれば、これも問題となりますが、ハンドドライヤーについては、あまり大きな需要の落ち込みは思い付きません。
強いていえば、ハンドドライヤーの定期メンテナンスの需要が無くなっている可能性がありますが、インパクトが大きいとは思えません。
また、使用する電気の量が減り、電力会社の売上に多少の影響があるかもしれませんが、これも大きな問題にはならないでしょう。
※将来的な事まで考えれば、ハンドドライヤーの買い換え時期が延び、結果、ハンドドライヤーの将来需要が減る可能性はあります。
そして、このハンドドライヤーが使えない事によって、新規に発生している需要があります。
そう、「手を拭くための紙(ペーパータオル・タオルペーパー)」の需要です。
ハンドドライヤーを使用禁止にする代わりとして、ペーパータオルを新規に設置した施設は少なくありません。
この分が、新しい需要となっているはずなのです。
このような事を踏まえると、ハンドドライヤーの需要は減らず、そして、紙の需要は新規に発生(増加)しているはずなのです。
ですから、経済にとってはマイナスはなく、むしろ、プラスになっている可能性がある、と考える事が出来るのです。
ただし、もちろん、これは、一つの視点に過ぎません。
将来的な事も含めて考えるのであれば、他の視点、特に「地球環境にとってどうなのか?」といった視点も入れて考えるべきではあります。
ただ、新しい需要を生み出すのに企業が四苦八苦している中で、これは、なかなか興味深い事例と言えるのではないか、とは思っています。