ビジネスコンサルティングの現場から

各種ビジネス・コンサルティングに携わる担当者が、日頃、「考えている事」や「気が付いた事」を不定期に発信します。

高校生・大学生のカップル割合は?8割ってホント?【頭の体操】

独り身とカップル カップルの割合(比率)

ある時、学生と話していると、その学生が、

自分のバイト中の経験からすると、最近の高校生・大学生の8割は付き合っている人がいますね

と発言しました。

そんなにカップルの割合(付き合っている人がいる割合)が高いという事は無いはずなのですが、問題は、そこではありません。

その学生が「なぜ、そのように思ってしまったのか?」が、ここでは大事です。

皆様は、すぐに、その理由、思い付かれましたでしょうか。

その理由を当てる事は、それほど難しくはないと思います。

しかし、その理由には、インターネット時代の、特に若者にとって、大事なポイントが含まれているようにも思います。

ですので、皆さまも、その学生が誤解してしまった理由を少し考えた上で、続きをお読み頂ければと思います。


勿体ぶるほどの話でもありませんので、最初にカラクリを明かしてしまいましょう。

その学生は、ある商業施設の小売店でバイトをしていました。

そして、その商業施設は、お出かけ先として人気のあるエリアに存在していました。

その小売店に来ていた高校生・大学生を観察した結果、冒頭の「高校生・大学生の8割はカップルである」と分析してしまっていた訳です。

もうお解りだと思いますが、彼の分析手法は適切ではありません。

「その店(または、その施設)に来ている高校生・大学生の8割はカップルである」というのであれば、それは正しい分析だったかもしれません。

しかし、それは、「世の中の(または、日本の)高校生・大学生の8割がカップルである」という事を意味しません。

その店に訪れている客層は、かなり偏っているからです。

むしろ、「カップルだからこそ、その店に行った」という言い方をした方が正しいくらいであり、その店で観察している限り、カップル率が高いのは当たり前なのです。


ちなみに、交際についてのデータは様々な所が発表していますが、どのデータでも「高校生・大学生の過半数は彼氏・彼女がいない」という結果が出ています。

大手のデータとしては、スタディサプリ(リクルート)の2018年の調査がありますが、その調査結果でも、高校生の78.8%は彼氏・彼女がいない事になっています。

ですから、そのようなデータからも、冒頭の学生の分析は間違っている事が裏付けられます。


ただ、冒頭の学生を一方的に責める訳にもいかない事情がありました。

実は、冒頭の学生との会話は、コロナの影響で授業がオンライン中心になっていた時期のものでした。

この為、その学生は人と接する機会が減っていたのです。

本来、学校など多くの人と接する場所に行く機会が多ければ、もっと偏りのない集団を観察する事で、冒頭のような間違った分析をせずに済んだかもしれません。


しかし、このように間違って世の中を分析してしまうという事は、近年、コロナと関係なく多くなっているようにも思うのです。

それは、「ネット利用時間の上昇」という理由によってです。

ネット中心の人付き合いだと、従来よりも「自分と近い考え方の人が集まりがちな傾向がある(自分と合わない人間関係は遮断しやすい)」という話を聞くことがあります。

また、ネットでは、見たくない情報は見ずに済ませがちですし、そもそも、リコメンド機能などによって、「自分が関心を持ちそうな情報ばかりが目に入ってくる(そういう情報が画面に良く表示される)」という事も起きてしまいます。

結果、以前よりも、「まわりが見えづらくなる」という事は起きやすくなっているように思うのです。

インターネットの普及によって便利にはなりましたが、このような「一見、気づき辛いが、怖い事」もある事には注意しないといけないように思います。

特に、冷静に判断するのが難しい事については、よほど気を付けないと、冒頭の学生のような大きな間違いをしてしまう事もあるでしょう(カップル割合についても、一部の人(カップルになっている人)が目立つ上、自分の境遇も判断にバイアスを与えがちなので、冷静に判断するのは難しい例と言えます)。

自分も気をつけないとな、と思った一件でした。