ビジネスコンサルティングの現場から

各種ビジネス・コンサルティングに携わる担当者が、日頃、「考えている事」や「気が付いた事」を不定期に発信します。

経営にとって逆効果!マスクなし接客は止めましょう

マスクなし マスクしない 接客

最近、

マスクなしでの接客を行っている店がある

という話を耳にしました。

もちろん、「マスクが手に入らない」や「マスクが出来ない事情のある従業員がいる」といった話ではありません。

その方が経営にとってプラスであるという判断をした為に、以前はマスクをして接客していた所が、「自店舗ではマスクをしない方針に切り替えた」との事でした。

しかし、本当に経営の事を考えるのであれば、

マスクなしの接客を従業員に強要する事は、絶対にしない方が良い

という事になります。

もし、マスクなしでの接客に切り替えようとお考えの経営者がいらっしゃいましたら、この記事をお読み頂き、考え直して頂く事を強くお勧めします。

※この記事での接客とは、人と直接会って行う接客(対面)を指しています。オンラインでの接客(非対面)は対象外です。


私が聞いた「マスクを付けて接客するのを止めた理由」は、「その方が自社(自店舗)の接客レベルが上がるから」というものでした。

確かに、その考え方は理解できます。

マスクを付けると、顧客との会話はし辛くなる事でしょう。

また、せっかくの店員の表情が、顧客に認識して貰いづらくなります。

ですから、「マスクなしで接客した方が、売上がアップするはず(=自社の経営にとってプラスになるはず)」という考え方が生まれてしまうのは、理解ができます。


もしかすると、

感染症拡大を防ぐ為に要請されている『営業時間短縮』を守っていない店もあるのだから、『接客の際にマスクを付けるべき』という話を無視しても大きな問題にはならないだろう

という考え方をしてしまっている経営者もいらっしゃるのかもしれません。

営業時間短縮の賛否については、今回の記事では取り上げません。

あくまで、この記事では、「自社の経営にとってプラスかマイナスか」という視点だけで判断する事にします。

しかし、それでも、

従業員にマスクなしでの接客をさせるのは止めた方が良い

という結論になります。


それは、なぜか。

理由は極めてシンプルです。

マスクなしで従業員に接客させ、万一、感染者が発生した場合、自社に大きな損失が発生する可能性があるからです。

そして、少なくない数の感染者が街中にいると想定されている以上、その損失が発生するリスクも小さくないからです。

どれだけ体温測定などの対策を取っても、接客において、そのリスクを完全に排除する事は不可能です(症状が出ていない人からの感染があり得る為)。


もしかすると、

「そんな事は知った事ではない」

とおっしゃる経営者の方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、そうではないのです。

少なくとも、貴方の事業の従業員が感染した場合、その責任を取らないといけない可能性は十分にあるのです。

なぜならば、「従業員の雇用主(使用者)には『安全配慮義務』というものがあり、それを怠った場合には、その責任を追求される可能性がある」からなのです。


日本において、「新型コロナウイルスに感染すると、健康を害する(場合によっては、生命の危機に陥る事がある)」「マスクが新型コロナウイルスの予防に有益である」といった事実については、共通認識となっています。

最終的には裁判所の判断にはなりますが、こういった事を「知らなかったから、予防措置は取らなかった」という言い逃れは通らないと考えられます。

ですから、マスクをしない接客を雇用主に命じられていたせいで従業員に感染者が出た場合、その責任を問われる可能性があるのです。


もしかすると、「従業員本人も納得していれば、問題にされる事はないだろう」とお考えの経営者もいらっしゃるかもしれません。

しかし、貴方に責任追及してくるのは、その従業員本人とは限りません。

万一、その従業員が死亡した場合、その遺族(従業員の家族)が貴方に責任追及してくる可能性もあるのです。

大事な家族が死んで責任を追求してくる相手に、「本人は納得していました」と言っても、その従業員の家族が納得してくれるとは考えづらいはずです。


もちろん、「店内で感染した人が、さらに第三者に感染させた場合への対応」や「そういった事態が報道された場合の被害」などについても考えておくべきでしょう。


ここまで読んで頂ければ、「マスクなし接客を従業員に強制する」という事は、「営業時間短縮の要請に応じない」といった話とは、全く別次元の話である事はご理解頂けると思います。

経営状態が苦しく、精神的にも追い込まれている会社(店)の経営者が、「他の店でマスクなし接客に切り替えた」といった話を聞いてしまうと、「では、うちの会社(店)でもマスクを止めよう」と考えてしまうかもしれません。

しかし、マスクなしの接客には、このようなリスクがあるという事を十分にご理解頂きたいと思います。

そして、営業する上では、感染症対策をしっかりと行って頂きたいと思います。